サン都市計画社長・森口公晴のブログ

リートを取り巻く今日の不動産市場を概観

時価総額2兆8千億円の国内リート市場は不動産の取得簿価約4兆円に対して7割程度(-1.2兆円)と、賃料の減収とキャピタルロスが織り込まれたまま低迷している状態です。
売却損が生じるため資産の組み替えすら容易に出来ないため、現在、不動産市場全体の活性化を阻害する要因となっています。先日公表された2010年地価公示価格においても、東京都心部商業地の下落率が顕著であることに表れています。

2006年、2007年当時までは、リートは不動産市場の牽引役でした。
一般投資家や機関投資家の資金を不動産に向かわせ、賃料の上昇やキャピタルゲインが収益価格を押し上げ、それを根拠としてリートの株価は上昇しました。専門家も収益価格にお墨付きを与えました。

現在の日本の国民資産における不動産の資産総額は土地約1,200兆円、住宅約250兆円、住宅以外の建物約250兆円、計約1,700兆円前後ですが、そのうち市場に出回っているものは千分の数%に過ぎません。しかし、千分の数%の不動産の成約価格が数%上下するだけで不動産の資産総額に膨大な含み益・損を生じさせることになります。
内閣府の国民経済計算確報によれば、土地の資産総額の期末残高は17暦年末で
1,222兆円でしたが、19暦年末で1,276兆円(54兆円増)、
20暦年末で1235兆円(41兆円減)と変化しています。

以上のことから言えることは、リートは現在不動産市場の足かせとなっていますが、リートの株価がキャピタルロスを十分に織り込み、かつ、日銀や金融機関が今後デフレ対策として不動産融資に前向きになれば、十分オーバーフローする規模でないかと推測されます。

さらに、今後の不動産市場に影響を与える要因として中国をはじめとするアジア市場を考慮する必要があります。中間所得層の爆発的は増加と流動性の増大に対して、交通・インフラの整った不動産の供給が追い付いていないため、アジア各国の都市部の不動産は高騰しています。一方、平成に入って下落一辺倒の国内不動産市場は、バランス的にもそろそろ反転しても良さそうな時期に来ているのではないでしょうか。

ただし、昨年来のオフィス需要の低迷の要因については、デフレ経済のみならず日本経済の構造変化に起因している部分もあるのではないかと思われます。例えば、従業員120名程度で事務所面積が数百坪のグリー㈱という企業が、株式時価総額1千億円以上で評価される世の中です。本格的な事務所の需要増が起きるためには本格的な景気回復による雇用増加が必要だと思います。

2010.3.20

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