サン都市計画社長・森口公晴のブログ

1999年12月当時の藤原日銀副総裁の講演記録から

1999年12月7日の読売国際経済懇話会における藤原元日銀副総裁の講演記録を読みますと、現在の日本経済が10年前の状況と相似形であることに驚かされます。以下に、講演記録の要点をまとめてみました。

「(はじめに)一昨年(1997年~)来の国際金融市場の混乱や金融システム不安の影響により、昨年はデフレ的な様相を強めるに至った。本年2月よりゼロ金利政策という未踏の領域に踏み込んだ。(本年の日本経済の歩み)OECDによる本年の日本の経済成長率見通しは、春先の-0.9%より先月1.4%に修正された。デフレスパイラル瀬戸際までいった日本経済は、ゼロ金利政策という日銀の金融緩和策により株価上昇や金融システム不安が後退するなかで、公共投資、住宅投資、アジア経済全体の回復による輸出増により足元の景気は持ち直しつつある。(金融仲介機能の改善)一昨年から昨年にかけて国内の金融仲介機能は低下し、金融機関の貸し出し姿勢も厳しさを増した。本年春以降金融機関への公的資金の投入や資本増強、ゼロ金利政策の元での日銀の豊富な資金供給姿勢や中小企業に対する信用保証制度も効果を上げている。(産業構造改革の萌芽)IT革命と言われる情報通信技術革新の進展と需要の増大が心強い。(アジア経済の回復)アジア経済の回復によりアジア諸国から日本への輸出も拡大しており、回復が相互に波及するという拡大均衡のメカニズムが働き始めている。(内需の回復力の展望)多くの国内企業が過剰な設備と債務を抱えており、個人消費と設備投資の自立的な回復の動きがはっきりしない。リストラ圧力の元では家計の雇用・所得環境も好転しない。個人消費が本格的に回復するには、雇用、賃金環境が下げ止まり、改善に向かう展望が必要。夏場から秋にかけてかなり急激な円高が進展し、為替相場の変動は急激。財政赤字がここまで拡大し金融政策がゼロ金利というぎりぎりの領域まで到達しているなかで、出来るだけ早く民間企業の前向きな活動を引き出すべき。(ゼロ金利政策の特徴)日銀はデフレ懸念が払拭されるまでゼロ金利政策を継続するというコミットメントを行った。ゼロ金利政策はぎりぎりの異例な選択だ。(調整インフレ論について)物価上昇率に数値目標を設定して、達成できない場合中央銀行は国債や株式、場合によっては不動産さえ購入しようとすべきであるとする主張であるが、きわめて危険な選択であり、経済の振幅を助長し、金融資産を目減りさせ問題を一層深刻にさせる。(終わりに)日本経済のもつダイナミズムを引き出す努力がどうしても必要だ。」
以上が10年前の日銀副総裁の講演の要旨ですが、対比しながら現在の経済状況を私なりに次にまとめてみました。

「一昨年のアメリカのサブプライムローン問題をきっかけとした国際金融市場の混乱の影響により、昨年、今年と日本経済は前例のないデフレに陥りました。日銀は昨年12月より事実上のゼロ金利政策に踏み切り、本年12月には量的緩和に踏み切りました。OECDによる本年の日本の経済成長率見通しは、-5.3%に、来年は1.8%に修正されました。昨年のリーマンショック以降、各国政府による公共投資の拡大や各国中央銀行による金融市場への公的資金の投入、超金融緩和策により今年に入り新興国特にアジアを中心に力強い回復力を見せています。併せてグリーンニューディールに象徴される環境関連の技術革新や投資は急拡大しています。日本経済もアジア貿易の回復と在庫調整によりわずかながら回復基調にありますが、個人消費と設備投資の回復のめどが全く立っていません。企業のリストラ圧力の元で雇用・賃金はマイナスの一途をたどっています。これでは個人消費が上向くはずがありません。リーマンショック以降の急激な円高の波は輸出企業の体力を奪い、税収を上回る44兆円もの大量の国債発行によって財政赤字は拡大の一途をたどっています。」

リーマンショック以降の1年間、アメリカ、中国をはじめ世界各国は通貨を市場に大量供給することで金融恐慌やデフレと闘ってきました。日銀は急激なインフレを恐れていたため、この1年間世界の金融市場の中で通貨の番人の役目を担ってきました。しかし、その間国内のデフレと円高が進行し、やむなく1年遅れで本格的な量的緩和に踏み切るに至ったというのが実情です。
今、日本に求められているのは海外からの投資資金を呼び込むための本当の規制緩和、たとえばグリーンカードや永住ビザの発行条件を緩和し、外国人が日本の不動産を購入しやすくするとか、外国資本が参入しやすくなるような環境整備が急務だと思います。もう一つは、人件費を支払う企業が社会的に評価されるシステムが求められます。人件費を圧縮することで利益を計上する企業が評価される現在の会計制度には大きな課題が内包されているものと思われます。人件費は最終的に所得税・住民税として徴税されるのですから、少なくとも法人が支出する人件費には、他の経費とは異なる何らかの課税上の恩典を与えられるべきです。現状のままではバブルにならないかぎり雇用や賃金は増えません。
以上年末に当たって私なりの意見を述べてみました。来年も厳しい経済状況に変わりはないと思われますが、厳しいときこそ日本人の底力を発揮し、新たな未来を切り開いていきたいと思います。来年もどうぞよろしくお願いいたします。
2009.12.24

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