サン都市計画社長・森口公晴のブログ

11月3日、FRBによる「量的緩和」と「雇用の低迷」について

11月3日FRBは量的緩和措置(6000億ドルの米国債の買い取り)を発表しました。
これによりFRBのバランスシートは2兆3000億ドルから2兆9000億ドルに26%膨らみます。日銀は5兆円の多面的量的緩和措置を発表しましたので約4%の増大です。
米国は実を取り、日本は名を取り、この度はユーロが通貨のアンカー役に回った感じです。
FRBは量的緩和措置の発表後、他国に対して通貨安競争を戒めています。為替の安定や公平性の観点からみれば大変矛盾していますが、世界中の流動性が同時に26%も増加したら世界中はハイパーインフレになってしましますので、やむを得ないのかもしれません。

世界中の株式市場や債券市場、コモデティ市場、不動産市場等あらゆる市場規模に対して、
世界中に放たれた流動性は膨大です。戦争に例えれば、現代の戦闘が決められたエリアと予算のもと通常兵器で行われているように、市場も今後マネーの管理がより徹底されていくものと思われます。膨大なマネーは核兵器に相当し世界を壊滅させる力がありますから、各種市場への自由な参入と移動は厳しく規制されなければなりません。今後世界経済はますます自由市場経済から管理統制経済へと移行していくものと思われます。

FRBをはじめとして各国中央銀行が量的緩和を行う根拠として「雇用の低迷」が言われていますので、そのことについて考えてみたいと思います。

中央銀行は大量の流動性を市場に供給することによりデフレを克服し、資産インフレを起こすことで有効需要を喚起し経済成長を加速させ、結果として雇用・給与所得の増加に繋げるという遠回りなストーリーを描いていますが、もっと直接国民の雇用・給与所得に反映するシステム・考え方があってもいいのではないでしょうか。

現代の国際会計基準および法人税法上、人件費は一般管理費の勘定項目ですので、株主の利益と人件費は相反する関係にあります。人件費をUPするには労働生産性を向上させて株主の利益を増大させることが前提という考え方です。しかし、国家単位で考えた時、 労働生産性の向上の為には総需要の増加が前提になりますので、総需要の増加が起きない限り国全体の人件費=給与所得総額が増加することはありません。つまり政府主導の手当や補助金の繰り返しだけでは雇用・給与所得の増加は期待できません。

具体的には人件費は給与所得として所得税・住民税の徴収原資なのですから、法人の税額計算上は、一般管理費の勘定項目ではなく、新たな税額控除項目として扱うことを提案したいと思います。つまり株主に対して国(課税当局)と労働者が対等な立場に立つ。そうなれば企業は今以上に積極的に雇用を促進しようとするはずです。また雇用が促進されれば給与所得総額が増加し、総需要が増大しますので、結果的に税収は確保され、過度に流動性に依存することもなくなるのではないでしょうか。そのためには税制や国際会計基準の根本的な見直しが必要になると思います。

「人件費」を「人権費」と読み替えてみたとき、人の労働の価値を改めて見直してみる必要性を痛感します。21世紀「環境」が世界的なテーマになったように、「労働」についてもコスト以上の意味・位置づけを考えてみる必要があるように思います。
2010.11.7

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