サン都市計画社長・森口公晴のブログ

これからの世界経済について。

世界経済は新たな局面に突入したようです。
技術革新と情報化の進展によって、世界中の財とサービスの供給余力は無限大となったため、昨今の世界同時金融緩和によってインフレは起こりそうもありません。
無尽蔵のお金が適切に分配されずに、メガバンクや大企業、特権階級に集中し、所得格差が拡大し、一部が不正資金化して政情不安やテロの温床となっています。
今後世界的に可処分所得・労働分配率を高める税制・会計基準の変更が求められます。

第2次オイルショック直後の1980年当時、44億人の人類全体が健康で安心な生活を営めるだけの財とサービス(エネルギー、インフラ、食料、住宅、医療等々)の提供を受けることは不可能と考えられていました。原油は枯渇資源と言われ、世界共通の認識として44億人に行き渡らすだけの供給能力が地球上にないこと、慢性的な飢饉とインフレが頻発し、経済学においては技術革新と情報化が労働生産性を向上させ、将来の地球上の財とサービスの供給能力を増大させるための救世主として期待されてきました。

35年後の現在、世界の人口は73億人に増加しましたが、技術革新と情報化の進展、物流、教育の向上等によって人類の実質労働生産性は飛躍的に向上しました。 代替可能性も含めると財とサービスの供給余力はほぼ無限大となりつつあります。
世界の人口 44.5億人(1980)→60.8億人(2000)→72.4億人(2015)
世界のインターネット普及率 6.5%(2000)→35.4%(2012)
世界の携帯電話普及率    12.1%(2000)→89.5%(2012)
OECD国民1人当たりの労働生産性の推移
      23981US$(1980)→43085 US$(2000)→82941US$(2012)

遅ればせながら日銀が2013年3月に量的緩和に舵を切り、2015年1月にECBも同様に舵を切ったことで、世界中に通貨のアンカー役がいなくなり、世界各国が無尽蔵にお金を刷ることが可能になりました。中国やロシアは言わずもがなです。 世界各国が競って資金供給しているため、近い将来、お金は水や空気と同じように無尽蔵になると思います。しかし、財とサービスの供給余力も無限大となったため、インフレはおそらく起こりそうもありません。 世界経済のフェーズがここで変わりました。 もはやお金をいくら刷っても世界同時インフレになることはありません。日銀の期待インフレ率2%目標は方便で、円のマネタリーベースを増大させることで世界における円の存在価値を高めることが日銀の目的だと思います。各国中央銀行とも同様の思いです。お金があまねく行き渡ることにより、全ての人に必要な財とサービスが行き渡る理想社会が生まれつつあります。 現在は産みの苦しみといったところでしょうか。
円マネタリーベース推移/兆円  18.8(1980)→72.2(2000)→98.1(2010)→119.0(2012)→131.9(2013)→200.4(2014)→275.4(2015)
ドルマネタリーベース推移/百億$ 13.2(1980)→61.9(2000)→201.0(2010)→264.7(2012)→274.9(2013)→373.3(2014)→402.0(2015)

可処分所得を世界的に増加させる、労働分配率を高める税制、会計基準の変更が求められます。人件費は所得税の税源ですので、例えば人件費の一定割合を法人税より控除する等の雇用促進税制及び将来、人件費を一般管理費から特別勘定項目に移す等、国際会計基準を変更することで、労働分配率を上げ可処分所得を増加させるなど、世界的な基準の変革が求められます。
日本の労働分配率    73%(1980)→61%(2012)
アメリカの労働分配率 70%(1980)→64%(2012)

2015.2.13


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